公衆浴場業、旅館業等における循環式浴槽のレジオネラ症防止対策については、「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(平成12年12月15日付け生衛発第1811号同局長通知)等に基づき、関係者に対し御指導をお願いしているところですが、今般、循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策について、営業者による適切な管理が行われるよう、平成12年度厚生科学研究に基づき、上記通知の趣旨を踏まえた具体的な管理方法等をマニュアルとして作成しましたので、関係者への周知方お願いいたします。
なお、「遊泳用プールの衛生基準について」(平成13年7月24日付け健発第774号厚生労働省健康局長通知)に基づく遊泳用プールの付帯設備として、循環式浴槽と同様の設備が設けられている場合にも、当該設備の管理が上記マニュアルに準じて行われるよう、関係者への周知方併せてお願いいたします。
I.レジオネラ症とは
II.感染源および感染経路
III.循環式浴槽の管理方法
2.設備の概要
1)水質基準・検査方法・検査頻度
この防止対策マニュアルは、「I.レジオネラ症とは」、「II.感染源および感染経路」、「III.循環式浴槽の管理方法」の3つからなっています。I及びIIは、レジオネラ症の紹介と発生機構についての解説、IIIにおいては、循環式浴槽を中心とした設備概要と衛生上の問題点、管理上の安全対策について、「公衆浴場における衛生等管理要領」、「旅館業における衛生等管理要領」及び「新版レジオネラ症防止指針」などの最新の知見をもとに、現時点における望ましい対応方法を記述しました。
I.レジオネラ症とは
レジオネラ症が独立疾患として最初に認識されたのは、1976年夏のことでした。米国フィラデルフィアのベルビュー・ホテルで、在郷軍人会ペンシルバニア州支部総会が開催された時、同州各地から参加した会員の221名が、帰郷後に原因不明の重症肺炎を発病し、そのうち34名が死亡しました。この重症肺炎は、米国疾病予防センター(CDC)の精力的な調査により独立疾患と認められ、在郷軍人会(The Legion)にちなんで、在郷軍人病(Legionnaires’disease)と呼ばれました。半年に及ぶ研究の結果、新しい病原菌が発見され、Legionella pneumophilaと命名されました。その後、レジオネラ症には、肺炎型だけでなくインフルエンザのような熱性疾患型があることが、1965年のミシガン州ポンティアック衛生局庁舎内の集団発生にまでさかのぼって判明し、この病型をポンティアック熱と呼ぶようになりました。レジオネラ肺炎にかかると、悪寒、高熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などが起こり、呼吸器症状として痰の少ない咳、少量の粘性痰、胸痛・呼吸困難などが現れ、症状は日を追って重くなっていきます。 腹痛、水溶性下痢、意識障害、歩行障害を伴う場合もあります。潜伏期間は、通常1週間前後です。
II.感染源および感染経路
通常、レジオネラ肺炎は、レジオネラ属菌を包んだ直径5μm以下のエアロゾルを吸入することにより起こる気道感染症です。レジオネラ属菌は本来、環境細菌であり、土壌、河川、湖沼などの自然環境に生息していますが、一般にその菌数は少ないと考えられます。冷却塔水、循環式浴槽水など水温20℃以上の人工環境水では、アメーバ、繊毛虫など細菌を餌とする原生動物が生息しています。これらの細胞に取り込まれたレジオネラ属菌は、死滅することなく細胞内で増殖することができます。その菌数は、通常、水100mLあたり101〜102個、多い時は106個に達します。
III.循環式浴槽の管理方法
1.関連法規等に規定されている管理概要
(旧)厚生省は、平成12年12月15日に「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(生衛発第1811号生活衛生局長通知)(以下「管理要領等」と言います。)により、「公衆浴場における衛生等管理要領」および「旅館業における衛生等管理要領」を全面改正し、公衆浴場等の衛生管理の強化を図りました。この管理要領等において、循環式浴槽は「連日使用型」と「毎日完全換水型」に区分されました。なお、浴槽水の水質については、「公衆浴場における水質基準等に関する指針」(以下「指針」と言います。)の中では、レジオネラ属菌に関する水質基準を設け、10CFU/100mL未満、すなわち現行の検査方法で不検出という基準が設定されました。また、レジオネラ属菌の増殖を防ぐために、管理要領等で以下のような管理要点が示されました。
2.設備の概要
なお、本防止対策マニュアルは、循環式浴槽の利用・使用者から設備維持管理者、設計者、製造・販売者並びに行政関係者などの多くの方に利用してして頂きたく、参考となるべきことを、Q&A方式を用いて項目別に分かり易いかたちでまとめました。
1999年4月に施行された、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(いわゆる感染症法)においては、レジオネラ症は全数把握の4類感染症に分類され、診断した医師は1週間以内にその情報を最寄りの保健所に届けることが義務づけられました。
現在欧米では、レジオネラ肺炎は市中肺炎の2〜8%を占め、レジオネラ属菌は、肺炎球菌に次いで重要な肺炎の原因菌にあげられています。これまで、わが国のレジオネラ肺炎症例の実態は把握されていませんでしたが、感染症法の施行に伴い、今後は患者の実態がより正確に把握されると期待されます。ちなみに、感染症法の施行後2000年11月までに報告された患者数は178例となっています。
レジオネラ肺炎は健常者もかかりますが、糖尿病患者、慢性呼吸器疾患者、免疫不全者、高齢者、幼弱者、大酒家や多量喫煙者は罹りやすい傾向があります。土木・粉塵作業、園芸作業、旅行との関連も指摘されています。海外におけるレジオネラ集団感染の事例としては、この菌に汚染された冷却塔水から発生したエアロゾルが感染源であったケースが最も多く報告されています。レジオネラ属菌に汚染された循環式浴槽水、シャワー、ホテルのロビーの噴水、洗車、野菜への噴霧水のエアロゾル吸入、浴槽内で溺れて汚染水を呼吸器に吸い込んだ時などに感染・発病した事例が報告されています。レジオネラ感染症は基本的に肺炎ですが、汚染水の直接接触で外傷が化膿し、皮膚膿瘍になったり、温泉の水を毎日飲んで発症した事例もあります。
ただし、患者との接触によって感染したという報告はありませんので、患者を隔離する必要はありません。
などです。
公衆浴場では、毎日完全換水することが前提となっています。営業中は、充分に原湯又は循環ろ過水を供給することにより溢水させ、浴槽水を清浄に保ちます。一日の営業終了後に完全に水を落とし(貯め湯をせずに)、浴槽、ろ過装置、循環系を消毒・清掃します。浴槽の清掃管理を適切に実施していても、ろ過装置や配管系の消毒・清掃を怠るとレジオネラ属菌の繁殖を許すことになります。
温泉などで、砂ろ過等の循環ろ過装置を設置して継続的に営業する場合には、塩素消毒を併用することが前提となります。塩素を添加せずに連続運転をすると、ろ材にたまった有機物を栄養源として微生物が繁殖し、バイオフィルム(生物膜、ぬめり)を形成します。バイオフィルムの中では、レジオネラ属菌などの微生物は、消毒剤などの殺菌作用から守られて生息し続けます。これを除去せずに浴槽水だけを消毒しても、十分な効果が期待できないことは明瞭です。
ろ過器内に微生物を繁殖させて湯を浄化する循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)は、ろ過装置がレジオネラ属菌の供給源になるため、使用者はその危険性をよく認識しなければなりません。特に、業務用24時間風呂を、感染に対する抵抗力が高くない高齢者を対象とする施設に設置する場合には、特に十分な管理が必要です。
(1)循環式浴槽とは、どのようなシステムの浴槽をいいますか。 |
循環式浴槽とは、温泉水や水道水の使用量を少なくする目的で、浴槽の湯をろ過器を通して循環させることにより、浴槽内の湯を清浄に保つ構造の浴槽を言います。この中で「連日使用型循環浴槽」は、浴槽水を24時間以上完全換水を行わないで循環ろ過する浴槽、いわゆる24時間風呂です。構造は、図-1に示すように集毛器(ヘアーキャッチャー)、循環ポンプ、消毒装置、ろ過器、加熱器(熱交換器)、循環配管によって構成され、浴槽内の湯を浄化し適温に保つものです。
浴槽の湯は、髪の毛などの混入物が集毛器で除去され、消毒剤などを用いて消毒します。消毒剤には塩素系薬剤が推奨されていますが、温泉の中には塩素消毒の効果が十分に発揮されない泉質があります。その場合は、オゾン殺菌や紫外線殺菌により消毒が行われています。その後、ろ過器で更に微細な汚濁物質がろ過され、加熱器で適温に温めて浴槽に戻されます。
この他に「毎日完全換水型循環浴槽」があり、その構造は主に循環ポンプとろ過器で構成され、浴槽水は毎日完全換水を行います。
(2)湯の循環方式には、どのような方法がありますか。 |
浴槽の湯の循環方式には、一般に、(1)側壁吐出・底面還水方式(図-2)、(2)側壁吐出・オーバフロー還水方式(図-3)が使われています。
(3)ろ過器の機能について教えて下さい。 |
機能的には、物理ろ過と生物浄化に分けられます。
物理的ろ過装置は、規模の比較的大きな浴槽に使用されています。この装置の機能は、微細な粒子や繊維あるいは髪の毛などを除去するものですが、水に溶け込んだ物質を分解・除去する能力はありません。
生物浄化装置は、ろ材に多孔質の自然石、人造石(セラミックボール等)あるいは活性炭などを用い、これらを支持体として微生物を繁殖させたものです。ろ材自体のろ過能力は期待できませんが、ろ過装置内の微生物によって浴槽水の汚濁物質を分解させる仕組みです。この装置の大掛かりなものは、下水処理などで用いられています。しかしながら、循環式浴槽では水温が高く、レジオネラ属菌などの病原微生物もろ材で繁殖しやすいため、ろ過装置が浴槽水へのレジオネラ属菌の供給源となるおそれがあります。
(4)ろ過器にはどのような種類のものが使われていますか。 |
ろ過器には大きく分けて、(1)砂式、(2)けいそう(珪藻)土式、(3)カートリッジ式の3つの方式があります。公衆浴場における衛生等管理要領では、循環式浴槽のろ過能力は、1時間に浴槽の湯が1回以上ろ過されることとされていますが、一般には1.5〜3回程度の能力としている例が多いようです。
3.構造上の問題点と対策
(1)循環式浴槽の構造上の問題点とチェックポイントを教えて下さい。 |
循環式浴槽は、ろ過器や消毒装置が、常にその能力を発揮できる状態に維持されていることが必要で、以下に構造上の問題点とチェックポイントを示します。
4.浴槽の水質管理
1)水質基準・検査方法・検査頻度
(1)浴槽水の水質に関する基準はありますか。 |
浴槽水の水質に関する基準などは、「公衆浴場における水質基準等に関する指針」で以下のように定められています。
・毎日完全換水型: | 1年に1回以上 |
・連日使用型 : | 1年に2回以上(浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合、1年に4回以上) |
2)消毒方法
(1)浴槽水などの消毒方法に関する規定はありますか。 |
浴槽水などの消毒方法は、「公衆浴場における衛生等管理要領」で以下のように定められています。
(2)塩素系薬剤にはどのようなものがありますか。 |
塩素系薬剤には、表に示すように、次亜塩素酸ナトリウム(液剤)、次亜塩素酸カルシウム(散剤、顆粒、錠剤)、塩素化イソシアヌル酸(顆粒、錠剤)などがあり、その使用方法は種類によってそれぞれ異なります。しかし、どの塩素系薬剤を使用しても、水中で次亜塩素酸が生じ、その殺菌効果によって消毒が行われます。
種類 | 有効塩素(%) | 性状 |
次亜塩素酸ナトリウム | 5〜10 | 液体(アルカリ性) |
次亜塩素酸カルシウム | ||
さらし粉 | 30 | 固体(アルカリ性) |
高度さらし粉 | 70 | 固体(中性) |
塩素化イソシアヌル酸 | ||
トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム | 85〜90 | 固体(酸性) |
トリクロロイソシアヌル酸カリウム | ||
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム | 60 | 固体(酸性) |
ジクロロイソシアヌル酸カリウム |
(3)塩素系薬剤の注入(投入)にはどのような方法がありますか。 |
塩素系薬剤の注入方法には、自動注入方式による方法と投げ込みによる方法があります。
自動注入方式による方法には、塩素系薬剤をタイマーで制御し間欠的に注入するものと、循環水量に比例して連続的に注入するものがあります。なお、自動注入方式は、薬液タンクと薬液注入ポンプから構成されています。
投げ込みによる方法は、塩素系薬剤を管理者が浴槽などに直接投入する方法です。
いずれの方法においても、浴槽水の遊離残留塩素濃度を測定し、薬剤濃度が高くならないよう(1.0mg/L程度までが望ましい。)注意する必要があります。
(4)塩素系薬剤による消毒方法で注意すべきことは何ですか。 |
塩素系薬剤を注入(投入)するにあたり、ろ過装置のろ材などに微生物が繁殖している場合などには、発泡したり、塩素系薬剤の消費が激しくて必要な塩素濃度を確保できなかったりすることが想定されます。このため、消毒の前には逆洗などの徹底した前処理が必要です。
なお、ろ過装置に塩素消費量以上の過剰な塩素系薬剤を注入すると、浴槽水中の塩素濃度が高くなり、トリハロメタンや塩素臭が発生しやすくなったり、資機材が腐食するなどのおそれがあります。
また、温泉を使用している場合には、温泉成分と塩素系薬剤との相互作用の有無などについて、事前に十分な調査を行う必要があります。ただし、単純温泉であっても、規模や様式により結果が異なる場合もありますので、事前調査を行い、各施設が自前のデータを持つことが重要です。なお、温泉成分と塩素系薬剤との反応で、有害あるいは不快な状態に変化する泉質としては、低pH(塩素ガスの発生)、鉄やマンガン(酸化物の生成による着色)が考えられます。
(5)塩素系薬剤を使用するにあたっての一般的な注意事項は何ですか。 |
塩素系薬剤を使用するにあたっては、消毒効果の減少と事故の発生を防ぐため、取り扱いと保管に注意する必要があります。
塩素系薬剤は、他の薬品などとの接触や高温多湿を避け、光を遮った場所に保管します。
各メーカーから販売されている錠剤、ペレット、粒径の大きい顆粒のものは、消防法上の危険物には該当しませんが、固形の塩素系薬剤は強力な酸化性物質であるため、取り扱いを誤ると発火、爆発の危険があります。
特に、塩素化イソシアヌル酸と次亜塩素酸カルシウムを混合して使用・保管すると、発熱・発火する恐れがあります。
また、次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性のため、直接皮膚に接触しないようにします。なお、衣服や機械器具に付着すると腐食・損傷する恐れがあります。
保護具としては、保護マスク、保護眼鏡、保護手袋などがあり、必要に応じて使用します。
(6)有効塩素と残留塩素の違いは何ですか。 |
殺菌効力のある塩素系薬剤を有効塩素といいます。
塩素系薬剤が水に溶解した時にできる次亜塩素酸(HOCl)や次亜塩素酸イオン(OCl−)も有効塩素です。性質は異なりますが、クロラミンも有効塩素です。
一方、水に溶解した場合に塩化物イオン(Cl−)となる塩化ナトリウムなどの無機塩化物や有機化合物と結合した有機の塩素化合物の大半は反応性がないため、有効塩素ではありません。
有効塩素が、水中で殺菌作用を起こしたり、汚染物と反応したり、紫外線の作用で分解した後に、なお残留している有効塩素を残留塩素といいます。
残留塩素には、遊離塩素と結合塩素があります。次亜塩素酸(HOCl)や次亜塩素酸イオン(OCl−)を遊離塩素と呼び、クロラミンを結合塩素と呼びます。
遊離(あるいは結合)塩素、遊離型塩素、遊離有効塩素、遊離残留塩素などの用語はすべて同じ意味で使われています。
残留塩素を測定する場合、遊離塩素のみを測定する他、遊離塩素と結合塩素との合計量を測定することができますが、これを総塩素あるいは総残留塩素と呼びます。総塩素から遊離塩素を差し引いたものが結合塩素となります。
また、測定した塩素量を表す時は、遊離(あるいは結合・総)塩素濃度(mg/L)と呼びます。
なお、浴槽水の塩素を測定する場合は、遊離残留塩素を対象とします。
(7)塩素系薬剤で浴槽水を消毒する場合の注入(投入)量はどのくらいですか。 |
塩素系薬剤の添加量は、入浴者数、循環式浴槽の形態・仕様、ろ材などの汚れの状況、水質などにより、遊離残留塩素の消費量が異なるため、湯量(浴槽内+ろ過装置+配管内の合計)からだけでは一概に決定することはできません。浴槽水の遊離残留塩素濃度を測定しながら、その量を決める必要があります。
下記に参考として、遊離残留塩素の消費が全く無いことを条件に、湯量から求めた塩素系薬剤の添加量の算出例を示します(有効塩素濃度は各塩素系薬剤に記載されています)。
(8) 残留塩素濃度の測定にはどのような方法がありますか。 |
残留塩素の測定方法には、比色法(DPD法)や吸光光度法、電流法などがあります。一般には、DPD法を用いた携帯型の簡易測定器が使用されています。
DPD法(N,N-Diethyl-p-phenylene-diamine 法)
比色管にリン酸緩衝液、DPD試薬を添加後、検水をとり発色させます。検水中の残留塩素濃度に応じて桃〜桃赤色へと瞬時に呈色しますので、測定器の標準比色列と比色し遊離残留塩素濃度を求めます。
(9)アルカリ性の温泉水では、塩素系薬剤の消毒効果が低下する理由は何ですか。 |
pHによる塩素系薬剤の消毒効果は、殺菌力の強い次亜塩素酸(HClO)と、殺菌力がその1/100程度に過ぎない次亜塩素酸イオン(CIO−)の比率により異なります。以下に示す表のように、pH6.0では、約97%がHClOで占められていますが、pH7.5では50%、pH9.0では3.1%と激減しています。このため、アルカリ性の温泉水では、塩素系薬剤の効果が低下します。
pH | HClO(%) |
6.00 | 96.9 |
6.25 | 94.7 |
6.50 | 90.9 |
6.75 | 84.9 |
7.00 | 76.0 |
7.25 | 64.0 |
7.50 | 50.0 |
7.75 | 36.0 |
8.00 | 24.0 |
8.25 | 15.1 |
8.50 | 9.1 |
8.75 | 5.3 |
9.00 | 3.1 |
9.25 | 1.7 |
9.50 | 1.0 |
9.75 | 0.6 |
10.00 | 0.3 |
(10)塩素系薬剤の他にどのような消毒方法がありますか。また、使用上の注意点は何ですか。 |
消毒には塩素系薬剤が主として使われていますが、その他にオゾン、紫外線、銀イオン、銀・銅イオン、光触媒などの消毒方法があります。しかし、これらの消毒方法はいずれも消毒効果に残留性がないため、必ず、塩素系薬剤と併用して使用する必要があります。
5.浴槽の管理方法
高濃度のオゾンは人体に有害であるため、活性炭などによる廃オゾンの処理が欠かせません。また、紫外線はランプのガラス管が汚れると効力が落ちるため、常時ガラス面の清浄度を保つ必要があり、適切な維持管理が必要です。
なお、銅イオンはレジオネラ属菌の消毒効果は低く、一般には露天風呂の殺藻を目的として使われています。ただし、浴槽水の水素イオン濃度(pH)が8.0以上の場合には、殺藻効果が著しく落ちるので注意が必要です。
(1)浴槽の清掃・消毒に関する規定はありますか。 |
浴槽の清掃・消毒については、「公衆浴場における衛生等管理要領」で以下のように定められています。
(2)循環式浴槽の維持管理上の注意点について教えて下さい。 |
(3)その他の浴槽設備の管理で注意することは何ですか。 |
6.その他
(1)感染の危険因子について教えて下さい。 |
感染症の発症には、病原体−宿主(人)−環境の三要素が深く関わっています。
一般的には、レジオネラ属菌は感染性はさほど強くはないといわれており、本感染症は、宿主の感染防御機能が低下している場合(「II.感染源および感染経路」を参照)に多くみられます。しかし、何ら基礎疾患を有しない宿主(人)であっても、新生児や高齢者など生理的に感染症に対する抵抗が弱い宿主(人)は、レジオネラ属菌によって高度に汚染されたエアロゾル(空中に浮遊している小さい粒子)を一定量以上肺に吸引すれば、感染することがあります。
(2)レジオネラ症に罹らないようにするには、どうしたらよいのでしょうか。 |
本感染症は、レジオネラ属菌によって汚染されたエアロゾルを、直接肺に吸い込まないよう心掛けることによって、その感染を回避することができます。従って、超微粒子を形成しやすく、かつ肺に吸引する機会が多い、循環式浴槽、打たせ湯、バブルジェット式浴槽、シャワーの水などのほか、非加熱式加湿器、冷却塔水の飛散水などは、その管理に厳重な注意が必要になります。その他,工事現場の砂塵を吸い込んで感染した事例も報告されていますので、そのような場所では、マスクなどの着用も効果があるでしょう。
(3)レジオネラ症が疑われる患者が発生した場合の対応を教えてください。 |
各施設では、普段から、レジオネラ症の発生やその疑いがあった場合の対応についてシミュレーションしておく必要があります。
患者発生は、医師の診断および保健所への届出で確認されることが多く、届出の時点ではすでに感染の成立から相当時間が経っている場合があります。このため、各施設では日頃から来客者名や住所などを把握しておくとともに、問題が生じた時には設備の使用を中止し、浴槽水等の消毒を行わずそのままの状態で保存し、保健所等の指示を待ちます。
(4) 浴槽水のレジオネラ属菌の検査はどこに依頼すればよいのでしょうか。 |
最寄りの保健所や衛生研究所などに相談して下さい。
(5) 検査を行うにあたり、検体の採取・搬送などで注意しなければならないことは何ですか。 |
レジオネラ属菌は自然環境菌ですので、数日間の遠距離輸送では死滅することは、まずないと考えてよいでしょう。むしろ、輸送中に増殖して菌数が増える可能性ありますので、菌数測定を目的に検査を行う場合には、4〜10℃に保存した状態で輸送した方がよいでしょう。
照会先 厚生労働省健康局生活衛生課 03-5253-1111(内線2415,2437)